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1-11 「ストゥディウム」

ロラン・バルト「明るい部屋」
1-11 「ストゥディウム」
「ストゥディウムの存在を認めるということは、
不可避的に写真家の意図に出会い、それと協調し、
それに賛同したり賛同しなかったりしながらも、
必ずそれを理解し、自分自身のうちでそれについて検討するということである。
というのも、教養・文化(ストゥディウムはこれに依存している)は、
制作者と消費者の間で交わされたひとつの契約なのである。」

1-17 単一な「写真」
「ストゥディウムは、-中略- 単一な写真とでも呼べるものしか生み出さないだろう
-中略-
「写真」は、それを二重化せず、ゆらめかせずに、ただ強調して変換するとき、単一なものとなる。
単一な「写真」は、平凡になるためのあらゆる条件を備えている。
なにしろ構図の《統一性=単一性》は、俗用の(そしてとりわけ学校で教える)修辞学の
第一の規則だからである。」

1-22 事後と沈黙
「ストゥディウムは、つねにコード化されているが、プンクトゥムはそうではない。」

荒金直人「写真の存在論」
1 「明るい部屋」第1部精読 P. 23
「ストゥディウムは常にコード化されている、
すなわち読み取りの規則に従って読み取ることができるように構成されている。
このコードを支えているのは共通の文化や教養であり、その文化や教養を
支えているもののなかでも最も強力で重要なのは言語である。」

============

これからはスナップショットだけを撮ろうと決めた時、
ストゥディウム的な写真を撮る事を放棄した。
ストゥディウム的な写真を撮るのにも、それ相当の技術がいるし、
簡単に撮れたりはしない。
でも、おそらくは世の中のたくさんの人がストゥディウム的に写真を考える。
それはそういった人々にお任せすればいいこと。
あたしまでやる必要もなかったし、あたしが興味があったのは
もっと別のものだった。
あたしの写真には、意図も意味も必要なかった。
いつも視ていたのは、換言できない「なにか」だった。
だから、自分の写真にタイトルやキャプションを付けるのも嫌だった。
自分に嘘をつくような気がした。

バルトは、写真にはストゥディウムもプンクトゥムもない写真。
ストゥディウムだけある写真。
ストゥディウムとプンクトゥムが共存する写真があると言っている。
自分の撮影を通して考えると、撮影スタンスがストゥディウム的でも、
プンクトゥム的でもあまり関係がない。
プンクトゥムが写り込む事は、あくまで偶然に左右される。
1-20に、バルトもそのように感じている記述あり。
バルトはあくまで観客であり、撮影者ではないが、同じことかと思う。
さらに言えば、プンクトゥム的な写真を狙うことを主眼としていると、
オマケとしてストゥディウムが付いてくる事がある、という感じがする。
先日某SNSで、写真のセレクトの基準を聞かれたけれど
これが基準と言えば基準のひとつかもしれない、と思う。

ストゥディウムとプンクトゥムは、精神の構造と似ている。
ストゥディウムは表層意識的であり、プンクトゥムは潜在意識的。
実際、写真の読み取りに必要なのも、ストゥディウム的な写真を
考えるならば表層意識で事足りる。
プンクトゥムは、自分の深い場所にあるものを使わなければ、
その存在に気付くことすらできないように思う。
それを意識的に使う人はとても少ない。

あたしにとって、ストゥディウム的な写真は形而下。
プンクトゥム的な写真とは形而上。
あたしのいうスナップショットとは、撮影の実体験を通して考える形而上。
あたしを実験台にした、個別の、庶民の哲学。
ストゥディウム的な写真は、写真の持つ原始的な魔術を隠す。
だからあたしはそういった写真を撮る必要がない。
センセーは、あたしがストゥディウム的な写真を撮らないことを
肯定してくれた、ただ一人の人だった。
彼は、あたしがバルトに傾倒していくことを危惧する。
だけど違う。あたしは自分が赦されたような気がして、ホッとしただけだ。
自分と似たようなことを考えている奴は、いつでも本の中の死んだ人間か
手の届かない高名な人だった。
いつでもあたしが語り合う友達は、過去の死んだ人々だった。
センセーは、あたしにとって、本当に語りたい事を語り合える
初めての生身の人間だった。
あたしの考えを、決して否定したり、バカにしたりしなかった。



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by hitsuji_yu | 2012-06-22 11:31 | 写真


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